第16話

帰る、帰らない、帰りたくない……って思いながらいつもの帰り道を歩く。





いま、玖賀家を飛び出してひとりで生きていく力はわたしにはない。

そうなったら、迷わずわたしは " 死 " を選ぶ。

もう、生きる気力はないんだ。




死に場所を彷徨う毎日。




ママを失った日に思った。




パパ達に捨てられる日が来たら、その時はその要望を飲み込もう……って。

そして、ひっそりと……消えたほうがいいのかなって。




わたしの帰る場所ってあるのかな?





***





そっと玄関の扉を開ける。




なんだかんだ思いつつ、帰る場所は玖賀家しかないから帰ってきた。

パパは居るのだろうか?お兄ちゃん達はお盆前で仕事が忙しいと言っていた。

パパも忙しいハズで。




「ッッ!妃愛っ!こんのバカ娘っ!心配……心配しただろっ……。

怪我はない?ご飯は食べたか?」




玄関を開けた途端、パパが飛んできて思い切り抱き締められた。



出張からの帰りの予定は今日の夜だったのに、もう居る。

出張早まったのかな……なんで、パパ家に居るんだろうって抱き締められながら思った。




「うん、大丈夫。」




良かった。

お兄ちゃん達は仕事で居ないみたいだ。




それは、それで寂しいけど

なんだかホッとした。





「妃愛、どこに行ってたんだ?」




「………べつに。何処でもいいじゃん。」





パパには関係ないって口から出かけるけど、言い過ぎかって思って口を閉じる。




心配……してくれなくてもいいんだよなあ…………だって義務的なものだし。

無理して " パパ " にならなくても大丈夫って言えたらいいのに。






わたしは言えないんだ。

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