第11話

泣いて、泣いて、泣きじゃくって

気付いたら寝ていたらしく、

身体のダルさで目が覚めた。




今は8月の上旬。




毎日、猛暑が続いていて暑さで倒れそうになる。

スマホは家に置いてきたし、財布とICカードしか持ってきてない。

途中で買った飲み物もあと少しで尽きる。




「あっつい―――……連絡……」




心配するからと思って、いつもはスマホを持って深夜外出をしていた。




今日は飛び出してきたから、持っていくのを忘れて、今に至る。

連絡手段がないのがキツい。

迎えに来てもらう気もないけど。



そうしたら、わたしの本心が知られてしまうし、頑張って玖賀家に馴染もうとした12年間が無駄になってしまう。




だから、わたしは過去の家族の思い出を胸にしまって

こうやってひとり、思い出に浸ることをしてきた。




誤解されても、勘違いされてもいい。




わたしの中で、楽しかった4年間の思い出は永遠に消えない。

過去の家族の思い出を今の家族に話すのは失礼だから、言わないんだ。



言ってはいけない。





頑張ってパパになろうとしてくれたパパに申し訳ないし、

お兄ちゃん達も可愛がってくれてる。

心配だから怒るってことも理解してる。






裏切れない。






ママの大切な家族を裏切れない。

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