第12話

トボトボと歩き出す。




思い出すのは4歳まで過ごした楽しくて幸せだった日々。

ママが仕事で帰りが遅かったからいつも優くんのお家に帰っていた。

美咲ちゃんが優くんの会社の近くの保育園の先生で、わたしの担任の先生だった。



優しくて、可愛くて、綺麗で。



たまに会いに来る優くんと美咲ちゃんの息子の子どもを可愛がっていて

自他共に認める孫バカで、姪バカだったふたり。





だいすきだった。




たった4年だったけど、幸せな毎日だったんだ。





「…………ッッゆうくんっ……みさきちゃん…………会いたいよっ……。」





家では、誰にも言えない。



だれもわたしが過ごした4年間を知らないから絶対に言わない。

玖賀家に慣れないとって思って頑張ってきたんだからっ……わたしはっ、過去の家族を捨てないといけないんだッッ……





パパと優くんは似ている。




双子なんだから当然なんだけど顔も言動も仕草も似ている。

怒り方も、優しさも似ていて…たまに優くんが居るのかなって思うことがある。




そのたびに「パパだ。」って思うようにして、自分に言い聞かせる。




パパと優くんは双子だけど別人。



重ねたら失礼だから重ねないように頑張ってきた。

でも、もう……苦しい。ツラい。

優くんが亡くなって、パパができて。

パパって思うようになって……でも、優くんとの思い出が消せなくて。




パパから優くんのことを言われたことは一度もない。




「忘れろ」とも、「俺をパパだと思って」とも言われたことがない。





パパはママが好きで、好きで。




手放したことを凄く後悔していて、

連絡取れなくなってパニックになって呆然としていたと小耳に挟んだことがある。





やっとママが戻ってきたのに

オマケが着いてきて「ごめんなさい」って思うんだ。






パパが望んでいた未来でなくてごめんなさいって。

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