第8話

いいんだ、いい。



ママも優くんも美咲ちゃんももう居ないからわたしの胸に留めておけば。

もう叶うことのない夢になってしまったから、望みは捨てた方がいい。





―――……ごめん、なさい。




ママ、優くん、美咲ちゃん、ごめんなさい。





海が大好きだったわたしはフェリーで出掛けてみたいと言っていた。




あの日、ママと優くんはわたしの夢を叶えようとフェリーを予約した。





その途中で―――…………



優くん夫妻は帰らぬ人になった。





あの日から、海は封印した。




パパともお兄ちゃん達とも一緒に来たことがない。

連れてってくれようとしたけど頑なに拒んで玖賀家でお留守番してた。





海はひとりで行きたい。




ひとりで居たい。





***





そういえばはじめてか……。





お兄ちゃん達の前で泣きながら飛び出してしまったのは。





兄妹喧嘩以外では、わたしはパパとお兄ちゃんの前で泣いたことがない。






フェリーの事故のことで

家族の前では絶対に泣かないと決めている。






―――……余所者だから、持ち込まないと。






例え、パパが優くんの双子の弟だとしてもパパと優くんは別のひとだから。

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