第7話
あの日、海難事故に遭った日
わたしは「パパ」への想いを封印した。
海難事故後に精神が不安定になって、
頼る人も場所も居なくなったママはわたしを連れて玖賀家の近くに引っ越した。
パパもわたしもお兄ちゃん達と慣れてから再婚の予定だったんだろう……。
お互いに慣れるために―――……。
そんなにわたしを優先しなくても、良かったのに。
優くん夫妻が居なくなった時点でママの帰る場所はひとつだったし、
わたしは置いてきたお兄ちゃん達を心配していたことも、パパに会いたくて泣いていたことも知っていた。
だから言ったんだ。
ママに少しでも元気になってほしくて。「ママ、パパのところ帰ったら?」って。
ママが元気になれるならそれで良かったんだ。わたしは。それで―――……。
「………グスッ……グスッ……ママ……」
わたしは、気づいていた。
ママは強いようで弱い人だって。
本当は離婚したくなかったけど、
引けるに引けなくなって喧嘩別れしてしまったこと。
意地を張ってひとりで育てると決めたものの頼る人が誰も居ない中の子育てはママを追い詰めていたこと。
再婚を躊躇っていたことも全部知っていた。
ママが元気になれるなら良かったんだ。
それで、良かった。
そこにわたしの本音を隠しても……。
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