第81話

" 心拍が弱い "


" 中絶よりも、流産になる可能性が高いでしょう。どちらにしますか? "



あえて、苦しい方法を選択した。



自分への、戒め。ケジメ。


赤ちゃんの心の叫びを、母親として

キチンと受け止めようと思った。



流産は、5回。


切迫早産の末……死産を2回。



また、あの苦しみを……

1人で抱えないと……って、思うと……

胸が張り裂けるほど、涙が出た。



大量出血で、死ぬリスクがある……


って、宣告されたけど、

" 自然流産に任せます " って、言った。




カルテを見たのだろう―――……


6才まで育ててくれた両親、貴也兄、貴也兄の奥さん……みんな、複雑な顔をしていた。




いいの。いいんだ、いいの……。



私が、選んだ道なのだから。




だから、知らなかった。



貴也兄が、仲野に行って、両親と大輔兄と大喧嘩していたこと。


両親、大輔兄、茉佑ちゃんが……

私の気持ちを知って、泣いていたこと。




全部、全部、知らなかった。

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