第76話

「えっ………待って……待って………」



貴也兄に呼ばれて、

家に行った時………吐き気と腹痛に

襲われて………トイレに駆け込んだ。


出血だった。出血が止まらなった。



また、また―――……確認できずに……



流産してしまうのか………

そう思ったら、動く事ができなくて…ただ、ただ、赤ちゃんが出てこないように祈った。



キミに………会いたいよ………




「梨絵子?大丈夫か?」


「お兄ちゃんッッ……お願いッッ…来ないでッッ、来ないでッッ……。大丈夫だからっ!」



お兄ちゃんは、私のことに関して敏感で

鋭い。信用してくれないと思った。



入ってこないで……って、言おうとしたら…血の気が引けて、倒れてしまった。



「梨絵子ッッ!梨絵子ッッ!……出血……?」


「大丈夫、大丈夫だから…ふらっとしただけ。大丈夫…だから。戻っていいよ。」



終わった、って思った。


史哉くんに、伝えられてしまう。



" 中絶 "しろって、言われてしまう……。



もう、手術はしたくなかった。

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