第77話

目を覚ましたら――……病院だった。



ガン検査をした病院で、

貴也兄が働いている病院だった。



「………お兄ちゃん………。」



ベッド横に、お兄ちゃんが居た。


難しい顔して。頭を抱えていた。

わかしのせいで……私が………困らせている……


いつまでも、

迷惑しか掛けられない……

お荷物な妹なんだな、私は………



だから、離婚したくなかった。



私に、帰る場所はないんだ。



「梨絵子……目、覚ました?」


「…………うん、ありがとう……。」



貴也兄の顔を見ないで、

布団を頭まで被って、返事をした。



「大丈夫か?梨絵子。」



冷静になろうと、

しているのがよくわかった。


貴也兄自身も、困惑しているのだと。



「産む。絶対に産む。」


「なに言ってんだ?おまえ。朝妃、妃響、煌妃、悠妃…子育てできてないのに、離婚した身で…何言ってる。無責任なこと言うな。」


「宿ってくれた命を無駄にしたくない。」


「梨絵子。癌だ。子宮癌。わかってるだろ?」


「何を言われてもこの子は産むっ!」



産みたい―――……産みたい……。



本来、授かる事ができなかった、命。



産みたい。産みたいって思った。

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