第75話

別れて、間もなくして―――……



「ん?梨絵ちゃん妊娠してる?」



麻紀ちゃんと、旦那さんの元で

お世話になっていた、私に……

突然、言われた……麻紀ちゃんの言葉。



「有り得ないよ。避妊手術した!

卵巣摘出してるし、卵管縛って、排卵できないようにしたから。」


「うーん?赤ちゃんの波動感じる。

絶対、妊娠してるって。検査…

検査薬買ってくるから、待ってて!」



半信半疑。動揺。不安―――……


避妊手術したから、妊娠はないと……

別れを惜しむように、何度も…何度も……史哉くんを求めた。



泣いて、泣いて……泣きじゃくって。



朝妃を妊娠する前に、戻ったように…

泣き止むまで、抱き締めてくれた。



妊娠していたら、奇跡だよ……。



麻紀ちゃんが、買ってきてくれた

検査薬を使ったら―――……



陽性の線が、くっきりと出ていた。



「やっぱり!梨絵ちゃん、おめでとうっ!お兄ちゃんとの赤ちゃん……居るんだよ?

赤ちゃん……おめでとうっ!」


「………………赤ちゃん………。」



検査薬を抱きしめて、号泣した。



不安や、動揺からではない。


喜びのほうが、上回っていた。

避妊手術して、妊娠できないようにした。


でも、赤ちゃんが……来てくれた。




素直に、嬉しかったんだ。




嬉しくて、涙が出たんだ。

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