第65話

「がんばれないっ!!!」



怒る私のことを、

史哉くんは笑って見ていた。



「これも、幸せだなあ。

梨絵ちゃん…やーっと、俺に心を開いてくれたね。ふっ、大好き。」


「は、はあっ!?」


「大好きだよ、梨絵ちゃん。」



あろうことか、

陣痛が落ち着いている間に、

キスをしてきた、史哉くん。


は、はあ!?なにを、なにを……



「やい、赤ちゃん。

ママをもう苦しめないでおくれ。

パパからママへとっておきの愛のキスを捧げた。キミへのメッセージだ。

下りてくるんだ、産道に降りてこい。」



意地悪な笑みを浮かべて、

史哉くんは、お腹の中の赤ちゃんに

話しかけていた。



「あはっ!ひーっ、ひーひー……最高!」


廊下の外から、優哉くんの

笑い声が聞こえてきて、

わたし達も笑ってしまった。



―――――――――



「もうむり、むり……痛い痛い……」



キスの効果か。話し掛けた効果か。


急に、陣痛が強くなり

一気に1~2分間隔、子宮口全開大。




「痛いよぉ……史哉くんッッ……」

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