第66話

史哉くんの胸に、顔を埋め

首に手を回し、

抱き着いた姿勢で、痛みを逃してた。



「梨絵ちゃん、下がってる。

今が一番痛いね。痛いね。」



私の、汗を拭いながら

史哉くんの涙も、零れ落ちてきた。



前途多難な、人生だった。



10才の時に、出会い。


お互い、両思いだったのに、

勘違いして、すれ違い続けた。


好きなのに、好きなのに―――……

史哉くんは、振り向いてくれなかった。

当てつけのように、彼氏を作った。



やっと、結ばれたのが15歳の時。


優哉くんが、玖賀を出ていって

落ち込む史哉くんに、漬け込むように……私から、告白した。


付き合ってからの、史哉くんは

冷たかった。好きではない……素っ気なかった。苦しくて、辛くて……涙を流した。



菜緒を、妊娠し―――……


少しだけ、優しくなったけど……

菜緒を亡くし、別れ……私達は、



お互い、別々の人生を歩み始めた。



浮ついた噂は、聞かなかった。

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