第63話

愛生の流産以降、

私の気持ちが、落ち着かないから

子供は、襲名後がいいな……って言っていた史哉くん。



待望の赤ちゃんだった。



「ふあっ!?け、蹴ったぞ?俺の事。

ははん。ママは渡さないって?

だめだめ。俺が、梨絵ちゃんを渡さないから。ママ優先です。」



胎動を感じ始めた時から、


赤ちゃんに向かって、対抗意識を燃やし

梨絵ちゃんは、渡さん!


なんて、言ってたっけ……。



私が、話し掛けたら……蹴る。


史哉くんが話し掛けたら、蹴飛ばす。



「さては、男の子だな?キミ。

もう、ママは渡さないって早くないかい??」



「もうっ、史哉くんったら。」



当時から、側近で居た

翔平くんは、史哉くんのデレデレ具合に

呆れ返っていた。


仕事そっちのけで、

私の赤ちゃんを心配していたから。




小柄な私は、


出産が、難産になることが

予想されていて。


帝王切開も視野に入れていた。



菜緒の時は、子宮を傷つけられたせいで……

大量出血とともに、比較的……安産で出血できた。




今回は、そうならない気配―――……

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