第61話

「思い出しちゃうのっ……。

思い出す度に、苦しくて。辛くて。

私が、育てたら……殺してしまう……」


「賢明な判断だよ。

菜緒の幸せを願ったんだよ。

母親失格ではないんだよ梨絵ちゃん。」




誰にも、言えなくて。苦しかった。



本来は、史哉くんに言わないと

いけないのに―――……



" 汚い " って、言われることが怖くて、

1人で、抱え込む事しかできなかった。



もう、二度と―――……


愛してもらえない……。

そう、考えたら……言い出せなかった。



「気付いてた。何があったのか。

それで、触れないできた。伝えたかったんだ。

大切にされる、愛される……自分を否定しないで、心を閉ざさないでって。

伝えたくて、梨絵ちゃんを抱いた。」




うん、うんッッ………私も、思ってた。



何か、伝えたいんだなって……。


必死に、伝えようとしてるんだなって。



生きて、幸せを掴め……って。



「後悔は、してないよ。俺。

だって、入院はしたけど、伝わったよね?大切に想われる気持ちは。

過去と、史哉と向き合うんだよ。梨絵ちゃん。

逃げたら、何も始まらない。

辛いんだったら、辛いと言う。受け止められないほど、頼りない男じゃねえぞ、史哉は。」


「………ッッ……うんッッ……。」


「史哉に、連絡してある。

手首を切って病院に運ばれたって。

逃げないで、梨絵ちゃん。」




ありがとう……ごめんなさい……



史哉くん、優哉くん……


ごめんなさい……。




私が、幼なじみでごめんなさい…。

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