第57話

相次ぐ、流産―――……。


史哉くんとの、関係。

妊娠は、嬉しかったけど……妊娠が怖かった。

また、流産してしまうのでは……

育たないのでは……不安で、不安で。



あの時の、辛い記憶が……


心の底から、消えてくれなかった。

消し去りたい、記憶だった。



結婚前に、ケジメをつけようと

隆弘に会いに行こうとした。


過去を、乗り越えられない限り……

わたしは、前に進めない。



って、思ったけど……

足が震えて、動けなくなってしまった。



雨に打たれながら、

気付いたら……菜緒が亡くなった場所。


海が見える……丘に来ていた。




犯された時の、記憶。


結来哉を、亡くした時の記憶。


愛生あおを、亡くした時の記憶。



辛かった記憶が、呼び起こされて……



もうダメだ。私は、使えない嫁。

誰からも必要とされない、人間。


愛してもらうなど、罪な女。



梨沙ちゃんと、菜緒、結来哉、愛生の

元へと、踏み出そうとした時―――……




「梨絵ちゃん、やめろ!何してる!」




史哉くんだと、思ってしまったんだ。

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