第56話

「もう、離したくない。

そばに居てよ。梨絵ちゃん。俺の隣に。

子供が、欲しいから結婚するんじゃない。」



" 梨絵ちゃんと、

共に人生を歩みたいから結婚するんだ。


俺の隣で、笑っていてほしいから。"



今までの、史哉くんなら言わなかった。


クールで。愛情表現も薄い人だった。

愛されているのか、不安だった。



史哉くんが、好き……っ。


私もッッ……、史哉くんと一緒に生きていきたい……願わくは、ママとパパに……。



「梨絵ちゃん、愛してる。」



さらに、強く抱き締められ、

史哉くんは意地悪く笑うと、私の耳元で、囁いた。



「出会った時、一目惚れをした。

運命だと思った。この子がほしい。梨絵ちゃん…キミが、天使だと思った。」



はじめての、意地悪な史哉くんに…

頭がクラクラした。恥ずかしくて、史哉くんを見る事ができなかった。



――――――

―――――――――



「あはは、ごめんね?梨絵ちゃん。

ん。でも、伝わったなら良かった。

もう、梨絵ちゃんに対して、遠慮しないから。

好きって、伝えるよ。」



史哉くんの腕の中で、


嬉し泣きをした私は、



2人で……病院に向かい、

完全流産を確認した。



散々、泣いたあと………



「妊娠してくれてありがとう。」



" ありがとう " それだけで、救われた。

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