第54話

海に移動する時も、

海についてからも、


史哉くんは、私の腰と肩に手を回し、

" 逃がさない " と、言わんばかりの…力の強さで。


私の事を、ガッチリホールドしていた。



「別れないから、俺は。

やっと、やっと……梨絵ちゃんと一緒になれたのに、なんで別れないといけないの?

大輔さん、優哉の妨害にあいながら、ずっと、梨絵ちゃんだけを思ってきた。」


「…………ッッ……ッッ……。」


「梨絵ちゃんに、彼氏ができた時も。

辛かったよ。苦しかったよ。俺を、選ぶハズは……ないよなって、諦めようと思った!!」



中学三年間―――……。



史哉くんが、私を選ぶわけない……


史哉くんの未来に、私は存在しない。

優しくて真面目な史哉くんが、仲野の要らない娘の私を……好きになるわけない。



諦めようと。


史哉くんのことを、考えるのを…

やめようと……

彼氏が居ない時期を、作らなかった。



それも、大輔兄の……

ふしだらな女、軽率な女、身勝手な女

って、思うキッカケに、なってしまったんだと、思ってる。



史哉くんも、遊び人………


って、思っていたと思う―――……。

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