第53話

「梨絵ちゃん、聞いてッッ……」



悲痛な叫び声。


史哉くんは、泣いていた。

梨絵ちゃん、聞いてって……。



私は、無視して……別の部屋で寝た。



もう、お腹の中に赤ちゃんは居ないのに

お腹に手を当てて。

身体を丸めて、史哉くんに気付かれないように……声を押し殺して、泣いた。



史哉くんが、菜緒の写真と、流れ出てきてしまった赤ちゃんを抱き締めながら

私の部屋の外で、寝ていたことに気付かなかった。


史哉くんと翔平くんの、2人で……

私が、何かしでかさないように傍に居てくれた。



泣いて、泣いて、泣いて―――……



朝陽が、昇る前……

海に行こうと部屋を出た、わたし。



最後の、決断をしようと思った。




玖賀の嫁は、役不足―――……。



結婚は、やめよう……と。




史哉くんに、伝えようと決めていた。

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