第44話

なんとか、間に合うように……


病院に行こうと、家を出た。

お別れすることが、辛くて。辛くて。



もう少し、早かったら―――……



一緒に喜ぶ事ができたかな?


そう、考えたら涙が溢れて。

前に進むことが出来なかった。



産みたかった。


一緒に、喜びを分かちあって

史哉くんと成長を見ていきたかった。



菜緒を、出産して以来………


怖くて、怖くて、震える私を……

史哉くんは、優しく包んでくれた。

史哉くんが、大好き……って心の底から、思ったんだ。


私は、史哉くんが……好きなのだと……。



「ふっ、ウッううっ……。つらい………

ひとりは心細い………。ごめんなさい……」



不器用な、史哉くん。



菜緒の妊娠が、発覚して……

初めて産婦人科行った時、私よりも緊張していた。


妊娠を、告げられると―――……

" 本当に?本当に?梨絵ちゃんのお腹に…僕の子供が居るんですか?生きているんですか?"



嬉し涙を、流していたこと。


今も、鮮明に覚えてる。

とにかく、真面目だった、史哉くん。



毎回、毎回付き添ってくれた。


母親学級に、なぜか知らないけど

史哉くんも付き添いで来て、待っていてくれた。



16歳。


若いなりに、史哉くんは

必死にパパになろうとしていた……。




その時のことを、思い出してしまう……

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