第43話

「梨絵ちゃん!」



名前を、呼ばれ……逃げ出した私を

史哉くんは追い掛けて

そのまま、抱き締められた。


史哉くんの、心臓の拍動がリアルに

伝わってきて、抱き締められている…と、気づいた。



「梨絵ちゃん………?」


「ここでは、いや……。

海……史哉くん、海いこう……?」


「ん。分かった。」



タクシーを呼び、海へと向かった。



時刻は午前3時。


このまま、一睡もしないまま……

流産手術か……って、思ったら…

涙が出そうで、必死に耐えた。



言いたい。聞いて欲しい……。


でも、受け止めてもらえるか……

分からない……。やめよう。

流産……もう、生きてないのだから……

言う必要は、ない……葛藤した。



葛藤して、葛藤して…………



他愛もない話をして、

今後の話をして。



私は、


" 結婚前提に、もう一度……

付き合ってくれませんか?幸せにします…… "



史哉くんに、告白されたけど……


私は、保留にした。




「考えさせてほしい……」と。




結局、言えなかった。


言えずに別れて、泣いた。



家に戻って、崩れ落ちるように泣いた。

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