第42話

バイトが、終わり……


着替えを終え、

家へ帰ろうとした時だった。



「梨絵ちゃん。おつかれ。」


「……………どうし、どうして………?」



なんで?なんで、今現れるの?


今日、子供とサヨウナラなのに…。


気持ちを断ち切ろうと思っていたのに…

なんで?史哉くん……現れるの…?



訳の分からない、涙が溢れた。



「俺の、マンションいかない?」


「…………いかない。」


「手は、出さないから。」


「もう、もう……放っておいてよ…

忘れようと……やっと、忘れられそうなのに……勝手だよ!史哉くん勝手だよ!」



私も、勝手な女だけど………


史哉くんも、勝手だと思った。



「ん、俺は勝手だよ?勝手……。

こないだ、梨絵ちゃんに会って思った。

やっぱ、俺には…梨絵ちゃんが必要だって。梨絵ちゃんの居ない人生は、何の意味が無い。」


「何それ、プロポーズ……?」


「プロポーズは、後日また言う。

今まで、逃げてごめん。支えられなくて、ごめん。一度、話したい。」


「………もう、遅いよ………。」



遅い………?


って、不安げな顔をしている史哉くんを

振り切って、私は逃げた。



史哉くんの前で、泣き顔も……

私の弱い部分も、見せたくなかった。


困らせる事もしたくなかった。



嫌われることが怖かった。

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