第37話

生まれても、史哉くんは変わらなかった。



菜緒を、連れて遊びに来てくれて。


親子3人、色々なところへ出掛けたり

のんびり過ごしたり。

菜緒を、手放した後も交流は続いていた。



私を、見ない――…それだけを除いて。



辛かった。苦しかった。



でも、嫌われたくなかった……。


両親、兄、姉、弟からは嫌われ……

仲野の家に居場所がなくて、反対を押し切って、一人暮らしをしていた。



史哉くんと菜緒だけが、

心の拠り所だった、あの頃―――……。



――――――

―――――――――



菜緒を亡くし、史哉くんは変わった。



私を遠ざけようと。


言われたくない言葉も沢山言われた。

必死に涙を堪えて、我慢した。別れたくなかった。



別れは、



史哉くんの精一杯の愛情だと知っていた。


梨絵ちゃんのことは、好きだけど

玖賀には、引き入れたくない。


いつか、別れを告げられる……

覚悟していたとはいえ、現実に直面すると、別れたくなかった。



泣きじゃくる私を、背に―――…



史哉くんと私は、別れた。



菜緒を、亡くして―――……

2ヶ月が経った時だった。

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