第20話

そこからの記憶は、ない。



「……………おとうさん………。」



病室のベッドに寝ていることに気づいた。

倒れてしまったんだ……ぼくは……。


情けない。情けない―――……。



「莉音、目を覚ました?」


「…………ゆう……と……に………。」



泣き腫らした目で、僕を見る、優音兄。


ずっと、傍に居てくれたのだろう……。

僕の手を握る手が、あたたかい………。



「体調はどう?莉音。」


「…………あたま、が………いたい………。」


「気を失って、倒れたんだ。

頭打ってるから、経過観察で…点滴治療してるよ。

莉音、今日は俺と妃響が着いてるから。

病院にお泊まり、できる?いやかな?」



お父さん………おとうさん……は?


おとうさん………おうち……お葬式……

家に、家に……帰らないとっ………。



「葬儀会社の都合でね、莉音。

お父さんは、10時頃かな。霊柩車でお家に帰るよ。だから、大丈夫だよ、莉音。

莉音が退院するのは朝イチ。9時30分だから。」


「………そっか、わかった。」



優音兄が、嘘を言っているようには

聞こえなかった。



朝の10時、出発―――………。

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