第19話

「お父さんッッ……なんでよっ………

やり残したこと…沢山あるのにっ……なんでよッッ……まだ、親孝行できてないっ。」



親孝行できてないんだってば……



僕も、詩音も……これからだって。


お父さんとこれから、色んなことが出来るのに…なんで、お別れをしないといけないの……。



「………親孝行………それは、わらって………

生きていって……くれれば、いい………。

それ以上……望むことは……ないよ……りおん。しあわせにな………。」


「お父さんッッ!お父さんッッ!

目を開けてよっ!お父さんッッ……お父さんッッ……お父さんってばっ!お父さんッッ………」



奈津子、優音、莉音、詩音。


ありがとう。しあわせだった……。

ありがとう。夫にしてくれて。父親にしてくれて。


玲音と、ずっと……見守ってるから。

笑って。生きていってほしい。



ありがとうな―――…………。



そう言い残すと、


静かに目を閉じていった………お父さん。




2月5日。午後6時49分。



村瀬雅人。享年56歳。


末期の胃癌により、死去。




お父さんは、天国へと旅立って行った…。

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