第9話

「莉音。」


「はいっっ……。」


真剣に話をしようとする姿勢は

子供の頃より、成長したなって感じる。


愛妃に入ったことが

いい方向に向いたんだな。

入った当初は、悠妃以上に不安で、不安で。

何度も、確認しに行ったっけ―――……。



「莉音。雅人さんは、延命治療を望んでない。

安らかに逝きたい…が、希望なんだ。」


「ッッ……おとうさんッッ……おとうさん……」


「病院に着いて、会えても……

雅人さんとは話せない可能性がある。」


「…………グスッ……うんッッ……うんッッ……」


「行ける?莉音。

俺は、無理に連れて行きたくない。

莉音の本心で、行動してほしいんだ。」


「うんッッ………。」



「妃響、莉音を甘やかさないでくれ。

莉音自身に決断させて、来て欲しい。

それが、莉音を遺して先に逝く俺の、最後の父親としての役目だ。愛情っていうやつだな。」



雅人さん―――……。


今、莉音は…必死に自分自身と戦ってます。


だから、莉音が到着するまでは、待って欲しい。

莉音がお別れできるように…それまで、生きていてください…。



「無理に、病院には連れていかない。

俺のことは気にしなくていいから、莉音。

自分の意思で。どうしたいか、決めなさい。」


「いくッッ……。いく……。僕、病院行く。」


「わかった。言ったこと、取消は無しだぞ。」


「………ッッ……グスッ………はいっ……。」



よく、決断した。偉いぞ、莉音。



これからの時間が……辛い時間。



莉音―――……。


後悔のないお別れをするんだ。

前向きになれる…お別れを……。

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