第6話

「………どうしたらいいのっっ……僕だけじゃ………支えていけないよっ………どうしたら…。」



まだ、優音に何でも話せるほど

打ち解けられていない、莉音。


詩音は、優音にべったりだから、

優音に、詩音を任せると話し合って決めている。



「すまねえな―――……妃響。

莉音は人見知りだから、優音を頼れない。

頼む。莉音を、弟と思って…支えてやって欲しい。莉音が甘えられるのは、妃響しか居ないんだ。」



頼まれなくても、そうするつもりだった。


悠妃と莉音を、可愛がってきたんだから。

悠妃のことは、突き放した時期があったけど、莉音とは今までどおりだった。



俺の、6人目の弟は、莉音だから。



「…う〜ッッ……ひいにいっ、ひいにいっ……。」


「ん、莉音。ここにいるよ。」


「怖い、怖いよ……しっかり、なんてできないよっ。」



莉音、もっと肩の力を抜こうか。



「莉音は、亡くなったあとのことを考えて、不安で。それで、病院行きたくないの?」


「ちがう〜……ッッ。

弱ってるお父さんを見るのが、辛いっ。

僕の自慢のおとうさんだもんっ。」


「そっか。辛いのか。」




癌の進行で―――…。



弱っていく姿を直視することが

怖いのだと―――……莉音は言う。



ここで、


" お別れできなくて、苦しむのは…莉音だよ "




なんて、言えるわけが無い。

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