第5話

何が、いいんだろう―――……


そう、自問自答してきた。



悠妃の1個下の莉音と詩音。


雅人さんは、父さんの高校時代からの唯一の友達で、俺も幼い頃から可愛がってきてもらった。

親父との関係を相談したり、朝妃、優哉さんのことも。数え切れないほど、お世話になってきた。


別れは、辛い―――……。



俺が、思うくらいだから……

莉音はもっと辛いのだと。想像がつく。



「………いきたくないよおっっ………。」



廊下を歩いている途中で

莉音が、俺に抱き着いて泣き始めた。


莉音、現実を受け止めるのが怖いんだよな。



「………ひいくんっ……僕、僕が……支えていくなんてできないよ……。お母さんも、詩音も。

家族を支えるなんて、できないっっ……。」



17歳。高校2年生。


まだまだ、遊びたい盛り。


遊んで、勉強して。

この先の人生を歩んでいく、莉音。



「誠音の恐怖も…まだ、強くなれていないのに……

僕が、頑張っていかないといけない…って無理だよっ。お父さんなしなんて…無理だよっ。」



莉音は、お父さんっ子。


末っ子の双子ちゃんを、雅人さんは溺愛していた。

誠音さんとも、玲音とも、優音とも似ていない。

お母さん譲りの穏やかな性格で、優しくて泣き虫の莉音。



まだ、お父さんとは……


お別れをしたくないんだよね、莉音は。

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