第9話 ファンサービスの時間だオラァ!【配信回】
配信機器の確認も兼ねて、3人はグラップコングたちがベンテンガタ周辺の木々を遊び半分、乱暴に蹴倒している現場を監視していた。
「凶暴ですね……」
「かなり好戦的な妖魔です。配信しますか?」
「お二人の紹介も兼ねたいので、予定通りお願いします」
「了解だ。少しここは思い出深い場所だしな」
「そうなんですか?」
「後で教えるよ。中佐、作戦は?」
「私とカズくんが惹きつけて、纏めてで行きましょう。ですが、木々を攻撃してはいけません。できますね?」
「は、はい。……やります。コメント掲示魔法の同期は?」
「スマホのバッテリー食うから、俺はとりあえず良いかな」
「私は見ましょう。では、主力攻撃はお任せしますよ」
雪馬はスマホアプリを操作し、杖の魔力制限を解除。同時にアプリによる魔法演算。魔力循環補助を開始。肩に張り付いていたドローンにスイッチを入れ、アプリから配信を開始した。
【お、始まった!】
【新顔が二人か……いや、片方ドラゴニュートじゃねえか!?】
【火吹き見れんの、マジ!?】
【ユキメちゃんがんばえ〜!】
【このコメントはセンシティブな内容を含んでいる可能性があります】
【なんだあの古臭い剣コスプレかよwww】
【あ、あ、あ、顔が、良い……♡】
最も最初に一撃を喰らわせたのは、空を駆け、横合いから古風なロング・ソードで攻め込んだ中佐だった。
切り混む瞬間。自動車でも衝突したような衝撃音が響き、悪戯に木々をへし折っていたグラップコングは、力ずくでへし折られるように真っ二つになった。
「自然破壊はいけません。尊き木々たちと同じ目に遭いたい者から、死にに来なさい」
【ヒェッ……】
【さっすがリアル竜の血脈。えげつねー】
【天使だ……】
【血化粧でしか、映えない天女】
グラップコングたちは二手に分かれた。体格の良い者は胸を叩きつつ、中佐に襲いかかって行く。
メスや若い個体は逃げようとして、和崇に制された。威嚇しつつ1頭が自慢の拳で襲いかかって来たが、アクリル・シールドで上手くいなされ、脇下を深くコンバット・アックスで切り裂かれる。
火がついたような絶叫と、威嚇のための胸叩きの応酬。
「ウホッ! ウホホッ!」
「オラァアアアアア!!」
「ウッ……」
悲壮感すら滲み出す迫力を前にして、和崇は容赦なく全力で吠え返し、アクリル・シールドをアックスで、何度も打ち鳴らしてやり返した。
【やるやん】
【この人も上手いわね。攻めすぎず、わざと囲む動きだわ】
【渋いないい意味で】
【このコメントはセンシティブな内容を含んでいる可能性があります】
そして、本命への準備と射線確保は、それだけで十分だった。
【いっけぇええええええ!!】
「我が敵を飲み込めぇ! ブリザー! ストォオオーム!」
スマートフォンの電源を大幅に使い、膨大な魔力生成が杖先に宿る。スキル詠唱に反応し、すべてを凍結させる、氷結の暴風が解き放たれる。
巻き込まれたグラップコングたちは、あっという間に氷像へと変化し、暴風に巻かれ砕け散って行く。
「ほう……」
「ふむ……」
きちんと木々を避け、彼女の年齢比ではそうは見かけることのできない大規模な魔法行使に、ベテランの二人も感心して氷結魔法を見つめていた。
◇◇◇
【今日これで寝れるわ〜】
【えがった、えがった】
【ナイス駆除。ナイス魔法】
【ええ連携だったで、3人とも!】
「ええと、ご挨拶が遅れました。こちら和……カズボさんと中佐さんです! 今度からダンジョン配信を手伝って頂ける事になりました! 皆さんよろしくお願いします!!」
【よろしく〜!】
【歓迎しよう、盛大にな】
【中佐さん、いや、中佐殿! 是非、お声を聞かせてくれ……!】
「どうも、血化粧で映える天女です」
【ファーwww】
【ファ、ファンサされた、初日から……!!】
【あばばばばばばあああ】
【いかん、危ない危ない……!】
【あ、鼻血でた】
【このコメントはセンシティブな内容を含んでいる可能性があります】
「前回の配信では素早い救援通報、誠にありがとうございました。今回はこの3人でベンテンガタ・ダンジョンに挑みます。こういった催しは初挑戦で、不勉強の身ではありますが、どうか末永く応援よろしくお願いします」
【YES、マム!】
【YES、マム!】
【YES、マム!】
【YES、マム!】
「ふふっ、なかなか楽しい物ですね?」
【あ……】
【…………いい】
【このコメントは管理者の認証待ちです】
【あら、ベンテンガタなら家の子も行ってます。見かけたらよろしくね?】
「あ、はい、よろしくお願いします!」
雪馬は生真面目にドローンにお辞儀をして、挨拶をしていた。和崇はそんな純朴で不器用な所が、このチャンネルに人を惹きつけているのだと感じていた。
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