第7話 一時ネットの晒し者【SNS回】

 翌日。雪馬は迎えに来た大型ボックスワゴンの中で、寝息を立てていた。席に座ってすぐに彼女は寝入ってしまった。昨日は夜遅くまで起きていたのだと言う。


「今のうちですね。これを」


 中佐がスマホを胸元のポケットから取り出して、和崇に画面を向けた。信号待ちの間に見る。最も有名なSNS。Z(ゼット)のトレンド画面。その撮影画面スクリーンショットが表示されていた。


「ユキメ、死の呪い、指輪、結婚、保健所職員……?」

「まとめはこれです。あなたの正体は露見していないようですが、ちょっとした有名人です」


 まとめサイトの記事には、お気の毒ですが、配信者は呪われてしまいました? と記載されていた。


「…………状況は?」

「推移を見ていましたが、同情が6、我々公務員に対する非難が2、彼女に対する非難が1.5、センシティブが0.5っと言った所でしょう。実にお行儀の良いことです」

「センシティブ?」

「センシティブです。彼女の後援者様方。相当火消しに回ってくれたようでしたが、それでも有識者に呪われてるのを看破されてしまったようです」

「下手に隠すより良いかもですが、参りましたね……今後の配信は?」


「配信なんてしていないで、学校へ行けって書き込みもありましたね」

「今時どこも録画リモートだろうに。まあ、人付き合いって点ではもちろん同意ですが」

「こっちの権限か、そっちの権限で止めても良いですが、現状彼女がそれを望んでいませんもの」

「了解です。最悪口の固い医師の確保と、明確な危険が迫れば一緒にセーフハウスに逃げます」

「ん。よろしく。火消しは依頼しておきます。引き続き解呪方法も検討しましょう」

「貸しですか?」

「貸しを使います」


 和崇は彼女に依頼される連中に同情しつつ、ハンドルを切った。

 目的地である軍施設に許可証を示し、所持品の簡単な検査を受けて入る。何人か眠っている雪馬の事を軽く見ていたが、気にせず二人は準備を整え始めた。


 迷宮名称。ベンテンガタ・ダンジョン。

 正確にはその水場横に存在する、神社跡地から下るダンジョン。破壊された神社の代わりに、隣接した潟の名称と、沼とも湖とも言えない規模から、そう名付けられている。

 階層は通常地下5階まで、この近辺では最も小さく聖域があり、初心者や試し切り用のダンジョンだった。


「ん……あ、すいません……」


 出発の準備を整えていると、雪馬が目を覚ました。慌てた手つきで、杖を自身の胸元に抱きしめて車を出た。


「良いって、昨日の夜は大変だったんだろ。焼き肉付き合わせて悪かったね」

「いえ……」


 雪馬は少し大きな物に目線を取られた。無骨で何箇所か黄ばんで腐食しているが、その威容はただ見ることさえ強い恐怖を感じた。


「あれは74式。この前ゴロゴロ吹っ飛ばしたのも同じだよ」

「戦車……ってやつですか」

「ああ。こっちは履帯こそぶっ壊れてるが、現役のブツさ」


 小高い丘に向かって長く伸びる砲塔は、さえずる鳥たちこそ呑気に羽を休めているが、ダンジョンの方に向けて、威容を持って伸ばされていた。







☆☆☆☆☆★★★★★


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