野食レストラン・レノミアサイド

 妊娠2週間も経つと、レノミアの腹もなんとなく張ってきた気がする。月経のないラビューナの体ではわかりにくいが、へそ下に浮き出た妊娠を知らせる紋様は健在だ。

 倫太郎が街へ出かけるこの日のために、前日から綺麗めの服を干しておいておいた。結果的にアイハも一緒に出かけることになったので、三人で農作業を終えてから二人が出かけるとレノミアはまた籠を編んで過ごす。最近は二人が狩猟をするようになったので自分も少しはゲテモノが食べられるようになった方がいいのだろうかとも思いつつ、その日に作っていたカゴが仕上がると干してあった蛇を見様見真似で調理することに。


 まずは皮を剥ぐ。頭を落とし、端をしっかりとつまんで引っ張ると、想像以上にずるりと、まるで靴下を脱がすように綺麗に剥けたので驚いた。ヘビには小骨が多く、そのまま食べると口の中に刺さって食べにくそうだったのは前回二人が食べているのを見て知っている。内臓は皮と共に綺麗になくなったので、あとは適当な幅に切り、大きめの石の上で石で叩いてひたすらミンチにする。臭みが気になると周囲で香りの強いハーブを見つけてきてミンチの上に添え、少し置いておくと無事にかなり臭みを誤魔化せたようだった。ねり団子にして三本の串に分けて刺し、よく焼けた頃に二人は帰ってきた。


 作ったのだと言うと倫太郎は驚いていて、買ってきた洋服を渡してくれる。求めていたそのものを見つけてもらえたことに感謝して、二人も新しいものを買ったのだと聞くと嬉しくなった。それから鍋もあるのだという。少しずつ豊かになる暮らしに三人は喜びながら、蛇とスイカを食べて満足して眠るのだった。



***


 その翌日も、倫太郎は買ってきた釣り針を使って釣りに挑むようだった。アイハと二人で、洗濯もついでにやってくると言い出かけていく。残されたレノミアは変わらずカゴ編みなどしていたが、寂しくなってきた頃に二人は戻ってくる。


「聞いて〜!ビギナーズラックってやつ」

「驚いた、結構釣れたもんだから」


 そう言いながらバケツの中を見せてくる。ニジマスのような魚が5匹。聞くと早い段階でアイハが3匹釣り、飽きて洗濯へ戻ったあと倫太郎が2匹釣ったという。

 早速夕飯に焼くことにする。そこまで大きなものではなかったが、品種改良されたニジマスは捌きやすく肉の体積も多い。「これがどうして山の川に?」という問いは当然浮かび上がるが、彼らの誰もそれを口にしないまま、串に刺して焚き火で炙り、3人で分け合って食べているうちその美味さで浮かんだ疑問も忘れてしまったのだった。


 翌日も二人は山へ向かった。この日は実がなる木を見つけてきて、甘い桃に似た香りがして甘酸っぱくて美味しかった!と言いながらカゴいっぱいに摘んできたヤマモモをアイハが大喜びで見せてくれる。早速レノミアはそれらを干すように、カゴと同じ要領で編んだザルの上に並べて洞窟の外へ置いておくのだった。


「魚もその辺の木の実も、こんなに美味しいなんて知らなかったわ」

「そうですね。いつものの方が栄養面は気にせずに済みますが…たまには嗜好品としていただくのも」

「そう言わずに、いろんなものを食べてみたらいい」


 倫太郎はそう言って笑う。しかし横から「魚釣りはあたしの方がうまかったけどね」などとアイハが口を出し、ムッとした倫太郎は「ヘビをとってこようか」と返す。あっという間にアイハは赤くなって、何よ、と掴み掛かった。

 レノミアはあらあら、と苦笑していたが、二人が絡み始めると手を引っ張られて、その日もイチャつき初めてしまうのだ──。

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