▶第1話のシナリオ
▶第1話のシナリオ
■場所(オべリア王国・街はずれ・昼間)
金髪で青い瞳。髪の毛は長く、顔の表情はほとんど見えない。簡素な鎧を身に纏い、腰に剣を差しているクルト・グランベルク(34)は、荷車を引いている。木製の梟が彫られた腕輪をしている。
老婆「すまないねぇ。冒険者さん」
荷車には、ローブを羽織った老婆が腰をかけている。
クルト「いえいえ、気にしないでください」
クルトは、にっこりと微笑んで老婆に振り向く。
老婆「この先の森を抜けた場所に私の家があります」
老婆は、不適な笑みを浮かべ目の前に広がる森を指さす。
■場面転換(オべリア王国・鬱蒼とした森・昼間)
クルトは、荷車を引いて歩いている。すると、男がクルトの前に立ち塞がる。重装備の鎧を身に纏い、ハンマーを担いでいる。
男「おうおう。今回の獲物は、ひ弱そうだな」
クルト「何か、ご用ですか?」
クルトの足元に矢が飛んでくる。矢には、奇妙な模様が描かれた札が巻き付けられている。クルトの足元に魔法陣が描かれていく。鎧を身に纏った者達が、茂みの中から姿を現す。その中には、人外の者も混じっている。皮鎧を身に纏い弓矢を持った者が、木の上からクルトを狙っている。
老婆「まぁ、そう言うな。今日は、この男で最後にしよう。流石に日に何度も芝居をするのは疲れる」
老婆は荷車から降り、男に近づいていく。クルトを囲んでいる者達は、クルトを見つめニタニタ笑っている。クルトは、にこりと笑う。木々から野生の鳥達が、一斉に空へと飛び立つ。
クルト「もしかして、僕は貴女に裏切られたのか?」
人外の一人が、額から一筋の汗を流し、喉を鳴らす。
男「こいつは、驚いた。えらく間抜けな男だな」
老婆「心配せずとも、命まで取る気はない」
男「黙って、身ぐるみ置いてけや」
男が、ハンマーで地面を叩く。老婆は、無数の火の玉を出現させる。それを合図にクルトを囲んでいた者達はクルトに襲い掛かっていく。
■場面転換(オべリア王国・鬱蒼とした森・昼間)
獣の耳や目。尻尾。鋭い牙や爪。金の瞳。耳や尻尾や髪の色は、灰褐色。短髪で無精ひげ。よれよれのワイシャツにパンツ。汚い革靴を履き、ボロボロのロングコートを羽織っているヴァルロコ。首を捻っている。側には、職員A・B・Cが立っている。4人は、≪へザリア≫と書かれた腕章を身に着けている。
ヴァルロコ「こりゃ、どういう状況だ?」
地面には、身ぐるみを剥がされた者達が泡を吹いて倒れている。体のあちこちには、棒状のもので殴られた跡がある。枯葉や枯れ枝が燃えている。ヴァルロコは、鼻を摘まみ嫌そうな顔をする。
職員A「僕に聞かないでください。分かるわけないでしょう」
ヴァルロコは、職員Aを小突く。
そこへ、一台の馬車がやって来る。ヴァルロコと職員A・B・Cの前で停車。黒髪。オールバック。眼鏡(フレームは、スクエア型。フレームの素材はメタル。リムの形状は、アンダーリム)。白いワイシャツに黒のパンツ。黒のベスト。レザーグローブ。パンツをインしたロングブーツ。ショルダーホルスターを身に着けており、
職員A・B・C「お疲れ様です。クルーガーさん」
職員A・B・Cは、カシムに深々と頭を下げる。カシムは、職員A・B・Cを無視して辺りを見渡す。
カシム「人の昼食時間を邪魔して、ただで済むと思わないでください」
ヴァルロコ「仕事だ。文句言うな」
カシムは、倒れている者達を一人ずつ眺め、手帳に名前や冒険者ランクを書いていく。
職員A「凄いよな。クルーガーさんの眼鏡」
職員B「そりゃ、そうだ。なんせ、Sランクの
職員C「眼鏡を通して見た物のステータスが分かる優れもの」
職員A・B・C「かっこいいな」
ヴァルロコ「うるせぇぞ。お前ら。カシムが見終わった奴から手足縛って檻車が来るまで見張っとけ」
職員A・B・C「はーい」
ヴァルロコは、ため息を吐く。カシムは、老婆の前で立ち止まる。
カシム「ほう。こいつは凄い。ランクBの魔法使いだ」
老婆は何かに怯え、ぶつぶつ呟いている。
ヴァルロコ「おい、ばあさん。ここで何があった?」
老婆の目は虚ろで、焦点が合っていない。
ヴァルロコ「駄目だな。完全に壊れてる」
カシム「余程、怖い目に遭ったのでしょうね」
カシムは、手帳のページを破き、ヴァルロコに手渡す。
カシム「どうぞ」
ヴァルロコは、側にいた職員Aに紙切れを差し出す。
ヴァルロコ「これで身元の確認を頼む」
職員A「分かりました」
職員Aは、箒に跨り、飛んでいく。職員B・Cは、倒れている者達の手足を縛り、奇妙な模様が描かれた札を張り付けている。職員B・Cが手足を縛っていた者が目を覚まし暴れだす。職員Bは、慌てて札を貼り付ける。すると、札は光を放ち拘束者の意識を断つ。ヴァルロコは、職員B・Cの姿を見つめため息を漏らす。カシムは、≪地面に刺さった矢≫と≪地面に描かれた魔法陣≫を見つめている。
ヴァルロコ「あぁ、ここのニオイが濃そうだ」
ヴァルロコは、四つん這いになり地面のニオイを嗅ぎ始める。その様子にカシムは苦笑いを浮かべる。
カシム「まるで変態だ」
ヴァルロコは、尻尾をぴんと立たせる。毛を逆立て、カシムを睨む。
ヴァルロコ「うるせぇ。俺だって好きでこんな事やってるわけじゃねぇ」
ヴァルロコは、地面のニオイを嗅いでいく。
ヴァルロコ「っくそ、焦げたニオイが邪魔して正確なニオイが分からねぇっ⁉」
カシムは、眼鏡のブリッジを左手の中指で押し上げる。
カシム「……お嬢さんは、お元気ですか?」
ヴァルロコ「何だい。藪から棒に」
カシム「……いえ、この間はありがとうと伝えてください」
ヴァルロコは、にやりと笑う。
ヴァルロコ「お前もそんな事が言えるようになったのか。月日が経つのは早いな」
カシムは、むっとする。銃を取り出して銃口をヴァルロコの頭に向ける。
ヴァルロコ「おいおい、早まるな。このニオイを嗅いでるとな、お前と出会った当時を思い出すのさ」
カシム「どういう意味ですか?」
ヴァルロコ「尋常じゃない≪殺意≫の臭いがする」
カシム「ほう。それは、会ってみたいですね」
カシムは、くすりと笑う。
■場面転換(オべリア王国・街はずれ・昼間)
上機嫌に口笛を吹きながら、クルトは荷車を引いている。
クルトの着ている服のあちこちは焦げ、頬には擦り傷がある。
クルト「ミゼリアに心配をかけてしまうな。どう、言い訳をしよう」
荷車には、鎧や武器が積まれている。
(第1話 終了)
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