4DAY
ただ、黙々とコートで打ち合いをする。ソフトテニスの授業だ。笛の音が鳴り、次の人に代わる。しばらくは休憩時間。結菜と一緒にコートの隅に腰を下ろす。
「芽衣、あれみて」
「なに?」
結菜の指差す方を見ると、朝霞先生が歩いていた。どうやら保健室へ向かっている様子。何しに保健室へ?! 私も保健室に行きたい!!!
「ちょっと保健室行ってくる」
「怪我してないのに行くなよ」
コートの上を風のように駆け、足から滑り込む。
「っらあぁあぁあぁあ!!!!」
ずさささささ。
スライディング成功。膝を負傷した。足が痛い。これは保健室へ行くしかない。この傷で朝霞先生の手当てを望む!!!
「結菜、怪我した。保健室行ってくる」
「バカだろ」
膝から血を垂らしながら、急いで保健室へ向かう。まだ居るよね? いや、居てくれないと困る!!! こっちはスライディングまでして命賭けなんだから!!!
保健室のドアを開け、中へ入ると、ソファに座りながら、片手で本を読む朝霞先生が居た。
「朝霞先生~~っ!! 足から血が!!!」
「大丈夫ですか。今保健室の先生居ないんですよね」
ぉおおぉおぉお!!! 朝霞先生とお喋り出来た!!! 今日はいい感じだぞ!!
先生が救急箱からごそごそと消毒液と絆創膏を取り出している。まさか、手当てしてくれるの?! 嬉しい!!!
丸椅子に座り、膝の傷を朝霞先生に見せる。
「随分と派手にやりましたね」
「愛のために命賭けで手に入れた勲章です」
私のそばに先生がしゃがむ。細くて長い綺麗な指先が、脚に触れる。ドキ。私も朝霞先生に触ってみたい。気づけば手が伸び、朝霞先生の髪を触っていた。
「夜山さん?」
「あ……あ…すみません!! 柔らかそうだったからつい!!!」
「消毒終わりましたよ」
私が髪に触れても何も思わないの? なんで何もなかったように笑うの? 私はこんなにも胸がドキドキするのに、先生は何も感じないの?
髪に触れても表情ひとつ変えない朝霞先生に腹が立つ。
「そうだ、お弁当」
「え?」
「本当は受け取ってはいけないのですが、あのバカが勝手に……折角なので頂きました。美味しかったです。ありがとうございました」
ちゃんと食べてくれたんだ! やったぁ!
「他の生徒には内緒ですよ」
しーっと人差し指を立て、朝霞先生の顔が私に近づき、額と額がこつんと当たった。顔の近さに頬が真っ赤に染まる。
「弁当箱取りに行ってきますので待っていてくださいね」
丸椅子の上で自分の膝を両腕で抱え込む。
……心臓が煩い。
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