第18話
「てめ、離せ!」
男は驚いた様子で殴りつけてきたが、俺はすぐにその攻撃を手首で払う。
男がナイフを動かそうとしてきたので、その手首をさらに強く握ると、男は悲鳴をあげる。
「い、いで!?」
悲鳴をあげた男の背中を蹴り飛ばす。
吹き飛んだ男が学園の外壁に背中を打ち付け、よろよろと体を起こそうとするが、俺がその背中に馬乗りになって地面に押さえつける。
「う、ぐ……」
必死に動こうとしたが、その腕を押さえるように力を籠めると、彼は悲鳴を上げるばかりだ。
男は苦しそうに呻きながら、俺を睨みつけてくる。
だが、もう俺にとっては脅威ではない。
「よし、こんなところだな。柚香、ちょっとメイに電話してくれ」
「はい、どうぞ」
柚香がスマホで連絡をとり、すぐにメイに繋がった。
『どうされましたか、柚香様』
「俺です」
『うえ、柚香様の声を待ち構えていたのに……! なんでしょうか?』
「……。なんか、和馬が派遣してきたと思われる殺し屋を捕まえたんだけど、どうすればいいですか?」
『顔写真送っていただけますか?』
「分かったよ。柚香、とってくれないか?」
「うん、了解。はいチーズ」
「てめぇら! ふざけてんのかぁ!」
柚香が自撮りするようにして俺たち三人を映した。
それから、メイが声をあげる。
『あっ、それただの犯罪者ですね。こちらで、処理しておきますので気絶させておいてください』
「了解」
俺はすぐに彼の体へと魔力を流し込み、意識を奪い取った。自分の想定以上に魔力を流せば、相手の意識を奪い取れるというのは異世界では常識だった。こっちの世界でも通用するようだな。
完全に気絶した男を確認してから、俺たちは学園へと向かって歩き出す。すぐに、黒服の男たちがやってきて、男を回収していった。
「……うーん、やっぱり修二強いね。私、全然心配しなかったもん。これなら、私がライオンの檻に入っても大丈夫かも?」
「……いや、入ろうとすんな」
まあ、実際ライオンくらいなら問題ないと思う。異世界で音の響きが似ているドラゴンとか倒していたし。
でも、自ら危険な領域に飛び込もうとするのはやめるように。
しばらく、スマホを手に持っていた柚香は何かを思い出したように、こちらを見てくる。
「……」
「どうしたんだ?」
「私、そういえば修二との連絡先交換してなかったなーって思って。ほら、私が一方的に電話番号知ってただけだよね?」
今そこ気にするのかい。そして、一方的に電話番号は強奪されたんだからね。知ってたじゃなくて。
「そういえば、そうだったな。交換しとくか?」
「うん……ふふ。なんだか、こういうところ付き合いたてのカップルっぽくていい感じしない?」
「……そうか?」
俺としては、仕事先の人と連絡先を交換したという意識の方が強かったけど……とりあえず、柚香は満足しているし、いっか。
無事犯罪者を撃退し、聖蘭皇華学園に到着した。
……俺は、眼前に広がる景色に思わず足を止めた。
「……ほんと、すげぇ学校だな」
正門から見える校舎は、まるで城のように豪華で広大だ。映画の中に出てきそうな巨大な庭や美しい建物が並んでいる。
そりゃあまあ、俺は異世界で本物の城を何度も見てきたし、なんならかなり良い立場で歓迎されることもあったよ?
だが、こう日本に戻ってきて、日本の雰囲気に馴染んでいる中での出来事だから、かなりインパクトは大きい。
「まあ、国内でも一番大きいかも? っていう学校だしね」
「だよな。一生縁のない場所だと思ってたっての」
「これからは毎日通うんだから、そのうち慣れると思うよ?」
「……まあ、そうだな」
「それじゃあ、こっちこっち。まずは、職員室に行かないと」
そう言って彼女は先に歩き出す。俺も慌てて彼女の後を追いながら、改めて学園の大きさに驚きつつ、自分の顔が見えそうなほどに綺麗に磨かれた床や窓を見ながら、学園内を歩いていく。
職員室へと向かい、担任に軽く挨拶を済ませる。
本当は先生と一緒に朝のホームルームに向かうのが一般的らしいが、俺の場合は柚香のボディーガードという仕事もあるため、そのまま柚香とともに教室へと向かう。
担任は結構適当そうな人で、「好きにやってくれー」とのこと。
案外、この学園自体がそうなのかもな。
そんなわけで、柚香が先を歩きながら、学園の広々とした廊下を進んでいく。
1-1が見えてきた。そこが俺と柚香のクラスになる。
俺たちが教室に到着すると、すでに多くの生徒たちが席についていて、楽しそうに談笑していた。
教室にいた生徒たちは俺たちに気づくと、少し不思議そうにしながらも柚香を見て微笑を浮かべた。
「おはようございます、柚香さん。……そちらの方はどちら様でしょうか?」
ちらちらとこちらが気になるようで見てくる。それは彼女だけではなく、他の生徒たちも挨拶をしながら様子を伺ってきている。
柚香はいつも通りの笑顔を浮かべると、すぐに口を開いた。
「こちらは、私の騎士様ですよ」
悪戯っぽく微笑みながら、そう言った。
おいおいおい、頭のおかしい子と思われたらどうすんだ。
「まあ、騎士様ですの!?」
同類しかいないから大丈夫そうである。
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