第44話

得意の愛想笑いで誤魔化していると「陽太先輩、元気?」と軽く聞かれ。



「はい、元気っつーか、うるさいくらいですよ。」


「確かサッカー推薦で大学いってたよな」


「そうです。M大行ってます」


「M大かあ、可愛い子多そう」


「…どうですかね。やっぱ大学は練習もキツくて彼女作る余裕がないわ〜とか、よく言い訳がましく言ってますよ」



ノリの軽い兄貴の性格から想像できたのか、高橋先輩たちがドッと笑いだしそれに頷く。



「うわ〜。陽太先輩、言ってそう」


「後藤先輩とかも最近会ってなくね?」


「今度声かけてみようぜ」



懐かしい名前を口にする高橋先輩たちが和気あいあいと話を振ってくるので、それに付き合っているとグラウンドと繋がる玄関から「そろそろ戻れよー」と他の部員が先輩たちを呼びに来る。



「やべ、そろそろ戻るか。」



高橋先輩が口にするとワーワー言いながらも先輩たちはその場を去っていく。



「またな〜、弟」



声をかけられ笑顔で返事をしていた俺の肩を高橋先輩がポンッと叩いた。



「眞紘。今度集まろうって、陽太先輩に声かけといてくれよ」



出雲のことなどすっかり忘れてくれたのか、それだけ言うとグラウンドの方へと向かっていくので、俺はその姿が見えなくなったところでようやく小さなため息を吐いた。

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