第40話

低い声が聞こえる。



────ほら来た。



先輩たちは聞こえなかったのか聞こえないふりなのか、仲間内で笑いあっている。



うわー、お前らも言われんぞー。俺みたいに『もう話しかけてこないでっ』ってキレられんぞー。



心の中で先輩達に忠告した俺がゴミに手をかけた時だった。









「──────どけよっ!」



その声が下駄箱中に響き、騒がしくしていたサッカー部の先輩達が一気に静まり返った。



落とした靴に履き替えようとしていた俺の足はピタリと止まって、数日前の出来事が頭を過ぎった。



"っ勘違いされたらこっちは困るの!"




…………あの時と、同じだ。



今のは、出雲が言ったはずで。だけど、出雲汐里の声は、明らかに先程までと違った。



俺ですらわかったんだから、間近で聞いていた先輩達に伝わらないはずが無い。



しん、と一瞬沈んだ空気が困惑した空気に変わり、ふざけて軽く悪ノリしていただけの男達の中で一番最初にまずいと思ったのはどうやら高橋先輩らしく。



「お、おい〜、汐里ちゃ〜ん?どうした?」


「……」


「…おら、お前らが俺との時間邪魔するから、汐里が機嫌悪くなっちゃっただろー」

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