第36話

告ったのに振られる、とか、他に好きな奴がいるとか彼氏がいるとか、遊びに誘っても断られるとか。



そういうことを言ってる奴らをみると、マジでなんで?って思う。



もちろん馬鹿にしてるとか、そういうわけじゃねえけど。



ある程度は、把握できねえのかって話。



うまく距離感測ってれば、相手にどう思われてんのか、イケそうなのか無理そうなのか…それくらい何となく分かりそうなもんだけど。



無理そうならやめときゃいいのに。面倒なだけじゃねえ?代わりなんていくらでもいるし。



どうしてもそいつじゃないとダメ、なんてことはないんだから。



それらしい"何か"をまた見つけて、拘らずに次に行けばいい。




…………なんて考える俺は、面倒でも気持ちだけで動く奴らが少しは羨ましかったりもするんだけど。




「……えー、有名な歌ですね。つまりこの歌は、大津皇子が木々の梅雨に濡れながらずっと君を待っていたよと石川郎女に贈った恋の歌で……」




教科書に載っている恩着せがましい恋の歌とやらの解説をしていく教師の声に、俺はまた窓の外を見やると、出雲汐里の姿は見えなかった。

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