第29話

黙って聞いていた俺と、出雲汐里の大きな瞳と、その台詞で視線がぶつかり。




だから、つまり、それって──────。




「…………え、好きなの?」




………………あ。




思わず心の中で思っているだけだったはずの言葉は、口から出ていて。



「……」


「……」


「……」


「……」


「……」


「……」


「……」


「……そ、」


「……」


「そ、んなわけないでしょっ、もう絶対話しかけてこないで!」




ストレートな俺のブローは見事に出雲汐里へダイレクトアタックしたらしく。



みるみるうちに真っ赤になった校内一の美女は、ギッと俺を睨みつけると可愛すぎる捨て台詞を吐いて、教室から飛び出て行った。



話しかけてこないでって……え、ガキ?



つーか、お前から話しかけてきたんだろって言いたくならなくもないけど。



「……」



数秒間。


俺は出雲汐里がいなくなった方向をボーッと見て。



教室でひとり、口元が勝手に緩んでいくのが分かり手で押さえた。




マジで何だ、あいつ。





「…………やば。」




"汐里ちゃん程に可愛い女はそうそういねえ!"




樹、お前の言った通りかも。

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