第10話

────なんて考えていられたのは一瞬だった。



出雲汐里の瞳は、俺と目が合った途端いきなりその綺麗な目の形を歪ませた。



その表情は普段見る不機嫌そうな出雲汐里の表情……より、さらに嫌悪感を丸出しにした顔つきで、目尻を釣り上げたその女に、つまり俺は今睨まれていて……。










「覗きとかありえないんだけど。気持ちわる」







そうひと言吐きかけるように言うと、その女はサッサと固まる俺の横を通り過ぎていく。




……は…………?




ありえない出来事に暫くフリーズしていた俺は数秒してからハッと気づき。



バッとあの女の歩いていった方向を振り向いた時には、出雲汐里は廊下の奥を歩いていて……。





は、はあ〜〜〜〜〜〜〜〜??!!!



あの女、今なんつった!?



俺に気持ち悪いっつったか!?!?!



その方向を引き攣った笑いで見つめる俺は、漫画だったらこめかみに怒りマークがついているはずだ。



信じらんねえ!!!



つーか、別に覗きたくて覗いてたわけじゃねえし!!!!



元はと言えばそっちが勝手にそこにいたんだろうがっ!!!



俺は呼ばれてきてんだよっ!!

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