第9話
俺の中にあった勝手な出雲汐里のイメージとはかけ離れたその笑顔を見入ったまま、その光景を見つめていた。
そういえば……。
出雲汐里って、男嫌いじゃなかったのか?
いや、待てよ……?
……つーか、さっきたっつんにしいちゃんとか呼ばれてなかったか!?
それに出雲汐里のあの顔……、誰がどう見ても"恋する女"の顔じゃねえ?
って、あの二人まさか……。
ふとそれに気づいてしまった時、ドアの小窓からその光景を覗いていた俺と、顔を不意にこっちへ向けた出雲汐里とバッチリ目が合い。
やべっ、
そう思ったのとほぼ同時、少し驚いた顔をした出雲汐里は瞬時にしてその顔から先程の笑顔を取り消した。
「あたし戻るね」
「あ、うん。午後も頑張ってね」
たっつんに声をかけると、マスクを付けた出雲汐里がドアの方へと向かってきて。
えっ、えっ。どうする!?
どっかに隠れ……いやいやいや、隠れんのおかしいだろっ!俺なんもしてねえし!
なぜか軽くパニックになった俺があたふたしていると、目の前の扉が開き。
ドアを開けた出雲汐里と俺の視線は、俺を見上げるその女の大きくて綺麗な瞳ともう一度バッチリと合った。
なぜか俺の心臓はその時ドキリと音を立てた。
きっと、多分……それは先程信じられないくらい顔を綻ばせて笑っていた出雲汐里の笑顔を見たからで……。
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