第52話

お嫁にって…。

どうしてそう話が大きくなるの?



そもそも膝に怪我の跡があるくらいで嫌がる男など、こちらから丁重にお断りだ。



そんな男なら、嫁になどいけなくていい。



思ってもいちいち反応すると更にうるさいので母親の言葉を無視して教科書をカバンに詰める。




「光、今日帰りは迎えに行こうか?」



とは言っても足の怪我も一応心配はしているのか、文句を言いながらも聞いてくるから。




てか、何言ってんの?



迎えにって…。



「車の免許なんか持ってないじゃん」



何で迎えに来る気?




「パパに車出してもらう?」



わざわざ?

気の使えない母親にため息を吐きそうになる。




「いいから。パパも仕事で疲れてるんだから、やめてよ。」



社長ってのは案外暇でも無いらしいし。



いつも忙しそうにしている父親に帰ってきてまで仕事を頼むのはどうなのって話で。

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