3.

第51話

あの日、帰宅すると過保護で口煩い母親は、わたしの膝の怪我を見て大慌てだった。




怪我など見慣れていないからか、怪我をしているのはわたしの方なのに自分までもが痛そうな顔をしていて…。




終いには救急車を呼んだ方がいいんじゃないかなど、信じられないことを言い出すので本当に呆れた。




足の痛みは2、3日もすればすぐ治ったけれど、傷口は思ったよりも深く。




これもすぐに治るかと思っていたけれど、ぐじゅぐじゅとしたそれはなかなか瘡蓋にならなくて…。




今は両膝に大きな絆創膏を貼りながら生活するという辱めを受けている。




「もうっ、本当に気をつけて頂戴よ。お嫁に行けなくなったらどうするつもりなの?」




足の傷が跡になるかどうかをやけに気にしていた母親は、怪我をしても文句を付けてくるらしい…。



ありえない…。



足の痛みを理由に数日休んでいた塾に向かうため支度していたわたしに不満そうな顔をしてくる。

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