第37話

「歩いて帰るよりいいんじゃねえの?」



軽い口調で言われて…。



いや、確かにそうかもしれないけど。



送るってことは、息吹藍の車だということで…。



「足痛いんだろ?」



まあ結構痛いけど…。



痛む足をもたもたと動かして、息吹藍の方へと近づく。



「あの、でも家遠いわけでもなくて…」



「はあ?」



「送ってもらうって距離でも…」



ないんだけど…。と思い、そこまで言うと不審そうな顔を向けられ。




「知ってるし。俺と同じマンションだろ?」




え……。




覚えていたの?

一回しか会ったことないのに…。



わたしも一回しか会ったことないんだけど。



でも息吹藍を覚えてるのと、わたしを覚えてるってのじゃ全く違うことな気がする。



どこにいても目立つ存在の息吹藍と、全くそうじゃないわたし。



これと言って特徴がある訳でもなく、話したことすらない相手を覚えてくれているなんてなんだか意外で…。



息吹藍の言葉に先に反応したのはわたしではなく先程の絆創膏をくれた女子で。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る