第32話

一瞬目が合った息吹藍から視線を逸らして、こんな状態の自分を恥ずかしく思うわたしは素早くそこから別の場所へと移動しようとすると。




「大丈夫なのか?」



え?



「それだよ、足」



視線を向けると、息吹藍のガラの悪さを際立たせるようなつり目がちな瞳が足に向けられていて。



「血ぃやばくね?」



あまりにも平然とした態度で声をかけられ、それに釣られるようにして思わず口を開いてしまった。




「雨が降ってきたから、走ってたら滑って…それで」



「転んだのか?」



「はい」



「なんかガキみてえだな」



ガキ?



意味がわからず、黙って息吹藍の顔を見ていると。



「おい、なんか拭くもん持ってる奴いねえの?」



拭くもの?



息吹藍がそう声を掛けたのは、コンビニ前の男女数名で…。

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