第9話 恋愛判定機の試作

 私と奈々さんが大学に戻ると、研究室の連中が冷やかした。

「何回くらいしましたか?」とか「ずいぶん早いお帰りで、喧嘩でもしましたか?」   

 など、研究室の仲間は、失礼なやつばかりだった。


 私がお茶の水教授に、おじいちゃんが提案した、恋愛判定機で「音を聞かせる」ことを相談すると、

「それは、面白いね。ぜひ試してみなさい」

 と言って下さった。

 私は恋愛判定機で使うヘッドギアに、耳穴式の補聴器で使う小型スピーカーを取り付けた。もちろん臨場感を出すために、左右の耳で音が聞こえるようにステレオ方式にした。

 ここまで凝らなくてもいいと思ったが、恋愛判定機使用時に使う電動リクライニングチェアーには、振動するようにバイブレーターを付けた。


 この試作機は、もちろん自分で試すことにした。

 映画から切り取った交通事故の音を録音したものを、レム期の睡眠に入った自分に聞かせるようにセットした。

 私の研究室は脳科学の研究室なので、睡眠導入剤を使わなくても、すぐに眠ることができる脳への刺激のツボを使うことができる。

 

 私は奈々さんに立ち会ってもらって、ブレイン・マシン・インターフェースをセットし、ヘッドギアをかぶって、リクライニングチェアーに座って、チェアーを水平に倒した。


「わっ!」

 私は大声を出して、リクライニングチェアーから跳ね起きていた。

 すぐそばで奈々さんがほほ笑んで、

「おめでとう」

 と言った。

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