第3話 ブレイン・マシン・インターフェース
脳波を測定してそれを解析するには、ブレイン・マシン・インターフェースが必要です。これは脳と機械をつなぐ装置で、私の所属する研究室では、これを使って脳から出る微弱な電気信号をコンピュータで映像化することができます。
すなわち、これを使えば、寝ていた間に見た夢を映画のように再現することができるのです。
脳に刺激を与えるのもこの装置を使ってやりますが、磁気的刺激や電気的な刺激は脳波と同じ電気信号になって脳波の測定が難しくなるので、脳への刺激には超音波を使うのが一般的です。
脳への電極の配置は、
もちろん非侵襲型の方が安全ですが、得られる電流は微弱になります。頭のどの位置に電極を配置するかは頭の大きさや耳の位置で変わってきますので、脳波測定用のヘッドギアはオーダーメードになります。
私がアパートの部屋で自分の脳波を測定するためのヘッドギアにリード線をつないでいた時、私の先輩で恋人でもある宮本奈々が私の部屋にやって来ました。
奈々さんは時々、私の部屋の掃除をしに来てくれます。
宮本奈々は、北九州の若松出身で、京阪大学の医学部の大学院生です。私が学部の二年生の時に開催された専門分野の説明会で、隣に座っていたのが彼女でした。その時、奈々さんは医学部の四年生で、やはり専門分野の調査のために、その説明会に来ていたのです。
(どこかで見た顔だなあ、どこで会ったけ?)
お互いにそう思いました。
二人とも脳科学に興味を持ち、次に二人が会ったのは、脳科学の研究室でした。
私は神奈川県立鎌倉東高校出身ですが、父親が九州育ちだったので、少しですが、九州弁が分かります。
研究室で宮本先輩が使い終わったピンセットを私に渡して、
「これ、なおしておいて」
と言ったので、私が、
「宮本先輩は、九州ですか?」
と聞くと、
「ええ、そうよ」
それが私と奈々さんが交わした最初の会話でした。
ちなみに、九州弁の「なおす」は、「修理する」ではなく、「片づける」を意味する日常的に使う言葉です。
それが今では、
(この人がいないと僕は、生きていけない)
とまで思うようになったのは、私のおじいさんと奈々さんのおばあさんの六十年前の
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