第14話:技術供与の開始

 日本政府との技術協力は少しずつ進展し、魔力を使った装備や防具の開発が現実的な段階に入っていた。だが、魔力という未知のエネルギーを扱うには、専門的な知識が不可欠だった。そこで、アルシャリオンはついに日本側の技術者たちに、魔族の技術供与の責任者を紹介することにした。彼の名はリヴィエル・アーグレイヴ。魔族の技術顧問であり、魔力工学の最高峰に立つ存在だった。


◇ ◇ ◇


 その日の朝、アルシャリオンはゼノンと共に、日本側の技術者たちと再び会合を持つために研究施設へ向かっていた。ダンジョン攻略に向けた協力は、日本だけでなく、世界全体にとっても重要な課題となりつつあったが、まずは日本との技術協力を確実に進める必要があった。


「アルシャリオン様、本日は魔族側の技術顧問をお連れいただけるとお伺いしています」


 日本の自衛隊を代表する佐々木隊長が、興味深げに尋ねてきた。彼の表情には期待感が溢れていた。


「その通りだ。彼の名はリヴィエル・アーグレイヴ。魔力を使った技術に関しては、我々魔族の中で最も優秀な研究者だ。彼が加わることで、技術協力がさらに深まるだろう」


 アルシャリオンはそう説明し、彼らにリヴィエルの登場を予告した。リヴィエルはこれから、日本側の技術者たちに魔力の本質を教えつつ、開発を指導する役割を担うことになった。


 その時、研究室のドアが静かに開き、黒いローブに身を包んだ一人の男がゆっくりと入ってきた。彼こそがリヴィエル・アーグレイヴだ。灰色の短髪に鋭い目つき、知性を感じさせる落ち着いた表情。彼の右手には、魔力が込められた指輪が光を放っていた。


「皆さん、初めまして。リヴィエル・アーグレイヴと申します。これから日本政府との技術協力において、魔力技術の供与を担当します。どうぞ、よろしくお願いします」


 彼は冷静沈着な口調で挨拶を済ませ、静かに席に着いた。日本側の技術者たちは、その威圧的な雰囲気と高度な知識を内包する彼に対して、やや緊張を感じているようだったが、同時にその存在に期待を寄せているのが伝わってきた。


「リヴィエルさん、魔力技術については我々にとって未知の領域です。今後、どのように魔力を利用していくのか、ぜひ教えていただきたいと思います」


 日本の技術者たちが緊張気味に問いかけると、リヴィエルは一瞬の間を置いてから、冷静に答えた。


「魔力は非常に強力で、扱いを間違えれば大きな災害を引き起こす可能性もあります。しかし、正しく制御すれば、これまでの技術では考えられなかった可能性を広げる力があります。まずは、基礎的な部分から始めましょう。魔力を安定して流し込む技術が最初の課題です」


◇ ◇ ◇


 リヴィエルが技術供与の責任者となったことは、日本側の技術者たちにとっても大きな転機となった。彼は早速、彼らが提出した魔力を使った防具の設計図を確認し、改良すべき点を見つけ出していった。


「この結界装置は、魔力の流れが不安定です。魔力を封じ込める際には、エネルギーの循環を意識することが重要です。ここに魔力の結晶を導入し、流れを安定させる仕組みを追加すれば、持続時間が倍増するでしょう」


 リヴィエルはそう言って設計図に指を滑らせ、細部の修正点を指摘していった。日本の技術者たちは、彼の指摘に感心しながらメモを取り、彼の指導に従いながら作業を進めた。


「なるほど……リヴィエルさん、貴方のおかげで魔力をどう活用すればいいのか、ようやく少し見えてきました」


 技術者たちは感謝の言葉を述べ、リヴィエルに向かって頭を下げた。リヴィエルは冷静に頷きつつも、淡々とした口調を崩さなかった。


「我々魔族は、長年にわたって魔力を利用してきました。その知識をあなた方に提供するのは容易なことではありませんが、共に学び、共に新しい技術を創り出すことができると信じています」


◇ ◇ ◇


 その日の夜、リヴィエルは研究室にこもり、魔力と現代技術の融合についてさらに研究を進めていた。彼の周囲には魔法書や古い錬金術の書物が散らばり、深夜まで作業が続いていた。


 アルシャリオンはゼノンと共にリヴィエルの進捗状況を確認するため、彼の研究室を訪れた。彼は膨大な量の資料を広げ、集中して作業を進めている最中だった。


「リヴィエル、調子はどうだ? 日本側との技術協力は順調か?」


 アルシャリオンが声をかけると、リヴィエルは少し手を止めてこちらを振り向き、冷静に答えた。


「はい、アルシャリオン様。日本の技術者たちは非常に熱心で、彼らの技術力は素晴らしいものがあります。しかし、魔力の制御については、まだまだ基礎段階に過ぎません。私が指導すれば、彼らもいずれ魔力を扱えるようになるでしょうが、急ぎすぎては危険です」


 ゼノンが頷きながら、リヴィエルの言葉を補足した。


「確かに、魔力を扱うのは慎重に進めなければなりません。日本側はリヴィエルの指導を受けて、確実に成長しています。いずれ、魔力を活用した防具や武器が実用化される日も近いでしょう」


 アルシャリオンは二人の意見を聞きながら、今後の展開を考えた。リヴィエルの存在が日本側の技術協力を一気に進展させることは間違いなかったが、今は慎重に一歩ずつ進めることが重要だ。


◇ ◇ ◇


 翌日、リヴィエルは日本側の技術者たちとの協議を再び行い、魔力を使った新たな防御装置の設計に取り掛かっていた。今回は、魔力を効率よくエネルギーに変換する技術に焦点を当て、さらなる改良を加える段階に入っていた。


「この装置では、魔力を一方向に集中させることが重要です。魔力の循環システムを改良し、持続的にエネルギー供給が行えるようにすれば、より長時間の防御が可能になります」


 リヴィエルが指導する中、日本側の技術者たちはその知識を吸収し、少しずつ魔力の本質を理解し始めていた。彼らはリヴィエルの指摘を反映させながら、防御装置の改良に取り組み、実験を繰り返していった。


◇ ◇ ◇


 数日が経ち、ついに初めての試作品が完成した。魔力を封じ込めた防御装置が作動する瞬間を見守る中、リヴィエルは冷静にその結果を観察していた。装置は徐々に力を発揮し、魔力が循環し始めるとともに、透明な結界が現れた。


「素晴らしい……これで、魔力を安定して封じ込めることができる。持続時間も従来の技術に比べて格段に向上した。これをさらに応用すれば、ダンジョン内での防御力も飛躍的に高まるだろう」


 日本側の技術者たちはその成果に歓声を上げ、リヴィエルに感謝の言葉を述べた。リヴィエルも少し微笑みながら、彼らの努力を称賛した。


「これで第一段階は成功です。だが、まだまだ改良の余地はあります。今後も一緒に研究を続けましょう」


 こうして、リヴィエルが技術供与の中心人物として本格的に活動を始め、魔力技術と現代の技術が融合し始めた。日本側の技術者たちはリヴィエルの指導のもと、次第に魔力の可能性を理解し、ダンジョン攻略に向けた技術開発が加速していく。まだ日本政府との協力は始まったばかりだが、確実に未来への一歩が踏み出されていた。



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