親子の会話!

崔 梨遙(再)

1話完結:1000字

 先輩から聞いた話。



 先輩の家庭は、先輩が高校生になった時には崩壊していた。父は愛人宅へ。家には帰って来ない。母も愛人と暮らし始めたとのこと。母親も家に帰って来ない。先輩は家で1人。生活費だけ貰って暮らしていたらしい。先輩は絶対に口に出さなかったのだが、絶対に寂しかったはずだ。僕なら寂しいと思っただろう。


 結果、先輩は女性と付き合うことで寂しさを紛らわそうとしたのではないだろうか? 先輩はテレクラに通っていたらしい。だが、不幸な先輩だったが、先輩には生まれながらにして持っていた武器があった。顔だ! 先輩はイケメンだったのだ。スタイルもいい。モテただろう。実際、女性に不自由することはなかったとのことだった。天は先輩に恵まれたビジュアルを与えたのだろう。だけど、先輩はなかなか本気になれず、複数の女性と付き合い続けたと言っていた。


 先輩は、オ〇パイが好きだった。Dカップ以上じゃないと付き合わないと言っていた。もしかすると、それも育った環境のせいだったのではないだろうか? 母性に飢えて育つと、オ〇パイを求めると聞いたことがある。先輩は女性関係はすごかった。1番ビックリしたのは双子と付き合ったことがあるということだった。双子、両方と同時に付き合っていたのだ。後に、先輩は巨乳美人を嫁にもらうことになるのだが、それまでの武勇伝がスゴイ先輩だった。


 そんな先輩、親の顔を見ない高校時代の日々だったが、親戚が亡くなった時に父親と久しぶりに会った。しばらく、父親と2人きりの時間があった。どちらも無言、沈黙が続いた。やがて、沈黙に耐えられなかったのか? 父親が先に口を開いた。


「お前、パイプカット(男性の避妊手術の一種で、精子の通り道である精管を切断して端を縛ること)って知ってるか?」

「知ってるけど……」

「パイプカットはええぞー! 避妊せずに出来るからなぁ。お前も子供を作り終わったらパイプカットせえや」

「はあ?」



 久しぶりの親子の会話がパイプカットかよ! その時、先輩は、もう親には何も期待しないと決めたと言っていた。僕は慰めることも励ますことも出来なかった。



 僕には何も出来なかった。でも、こういう人もいるんだなぁと思った。そして、僕は何があっても先輩を応援しようと思ったのだった。







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