エスパー由美
滝口アルファ
前編
引きこもりの
中学3年のときにイジメに遭ってから、
ずっと引きこもっている。
そんな由美には秘密があった。
それは、
彼女がテレポーテーションの能力を持つ
エスパーだということである。
由美は自分でも、
宝の持ち腐れだなと、
うすうす感じていた。
ある日のこと。
由美が住んでいる国の北部で、
震度7の大地震が起きた。
引きこもりの
薄暗い部屋の中のテレビで、
由美はその惨劇を見ていた。
テレビの報道によると、
孤立状態の地域がいくつも出来ているらしい。
由美は思った。
このまま引きこもっていても埒があかない。
いまこそ私のこのテレポーテーションの能力を使って、
被災者を救援できないものかしら?と。
しかし、
その勇敢な決意には
1つの大きなリスクがあった。
同じくテレポーテーションの能力を持つ母から、
「1回テレポーテーションするたびに、
1つ年を取るのよ」と聞いていたのだ。
それでも由美は、
ここぞとばかりに命懸けで、
テレポーテーションを使って
救援物資を運んだり、
被災地の子供たちを
連れ帰ってきたりした。
一回のテレポーテーションで
運搬できる重量は、
由美の体重48㎏以下だった。
10回、
20回、
30回、
40回、
50回、
60回、
70回、
78回。
由美は数日で、
20歳から98歳になっていた。
テレポーテーションは、
由美の心身を
確実にむしばんでいたが、
それでも、
由美はお構いなしに、
テレポーテーションを使った。
そして、
100歳になる、
80回目のテレポーテーションで、
地元に戻ってきた途端に、
由美は倒れて、
そのまま救急車で運ばれた。
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