第4話 能面野郎
これ、合コンだよね?
100歩譲っても、罰とかじゃないよね?
そして、
この男は
人間だよね?
「お前が邪魔で入れねー」
そう、私に言った真顔の男。
その男は席に座ると携帯を弄りタバコを吸い・・・。
私の方を見て・・・・。
「俺、湊ッ!」
とだけ・・・言った・・・・。
何だこの飲み会・・・。
すっごい・・・
重い。
女子がこんなに頑張る飲み会ってあるわけ???
重いおもーーーーい空気の飲み会はそのまま2時間。
お会計はきっと女子が払うんだろう・・・。
そう思い財布を出したら・・・。
「会計済ませといた!もう解散でいいよね?」
少し前にトイレに行っていた、私の目の前に座る能面男がそう言った。
え・・・。
まさかの男子払い?
あんなにつまらなそうな顔をしておいてそこはちゃんとしてるのね。
「ご馳走様でしたーー・・」
あからさまにつまらなそうな顔で私がそう言い立ち上がると・・・
「スッゲー不服そうな顔だねーーー・・」
能面男がこっちをチラッと見てニヤッと笑った。
本当に感じが悪い。
別に・・・・。
何かを期待していたわけでもない・・・。
でもね、
私は財布から1万円札を一枚だし・・・。
テーブルに置いた。
「格好いいのは分かったけど・・・ッ中身が空っぽってスッゴイ宝の持ち腐れだよね!!!」
そう言うと、能面男は携帯を弄る手を止め下から私を凄い鋭い目で睨んできた。
「なになに?どうしてもって言うから俺ら来たのにー・・しかも払ってやってるのに何言ってんのこの子ーーー」
真ん中に座っていた誠が言う・・・。
凄いなー・・・コイツ等。
「別に私は頼んでないしッ!・・・私はどんなにイケメンでも、女子に気を使わせてしまうような気が利かない男は嫌いッ!女の子がこんなに気を使ってる飲み会は初めてですッじゃッ!もう会う事は無いと思うけど、ごきげんようーーー」
超感じ悪い・・・・。
部屋を出る時・・・香奈さんの方も女の子の方も見れなかった・・・。
手が震えていた。
あんなに啖呵を切ったけど・・・・。
本当、ドキドキしたし少し怖かった・・・。
靴を履いて、個室から早歩きで店の出口に向かうと・・・。
「瑠衣ちゃん待って!!」
・・・・・。
追いかけてきたのは香奈さん・・・。
エレベーターの入り口で手を掴まれた。
「香奈さんごめんなさい・・・台無しにしちゃって・・・」
私は逃げるようにして来ちゃったけど・・・・。
残された人の事を考えなかった・・・。
「ううん・・・こっちこそごめんね・・・。もっと盛り上がるかと思ってたんだけど・・・。」
・・・・・・。
「・・・じゃ・・・私は帰ります・・・・。」
私が笑って言うと、
香奈さんはそれ以上は引き止めては来なかった。
エレベーターのドアが開き・・・・中に入り1階のボタンを押した。
そして、
ドアが閉まる・・・
その時 ―――
ガタンッ!!!
「・・・・・ッ?!」
エレベーターのドアが閉まる寸前・・・手が伸びて来てドアをこじ開け、
開いたすき間から中に入ってきたのは・・・・。
大きな・・・・
能面男・・・。
凄い怖い顔。
相当頭に来た。
そんな感じだった。
「湊君ッ・・・・」
香奈さんは、そんな能面男の顔を見て男の腕を掴んだ。
能面男は中に入って来て、また『閉』ボタンを押し・・・・。
香奈さんに向かって・・・。
「ちゃんと送るよ」
そう言って、ニカッと笑った。
そして、
・・・・ドアが閉まった・・・・。
ちゃ・・・
ちゃんと送るだとッ????
私は、能面男から離れ・・・エレベーターの壁に寄りかかりその大きな背中を眺めた。
「お前さ・・・・」
その背中の向こうから聞こえてくる低い声・・・。
私、殺されるのかも。
リアルにそう思った・・・。
ゆっくり振り返って来て上から突き刺さるような鋭い目。
何もされていないのに、胸がギューッと痛かった。
ギュッと目を瞑ると・・・・。
ほっぺに何かの感触・・・・。
目を開けると・・・・。
・・・・。
1万円札・・・・。
能面男は・・・屈んで私の顔にグッと近づき、何かを見透かすような真っ直ぐな目で私の目をじっと見つめ、
「お前、さっきはひっでーこと言ってくれたよな?」
ドクンドクンと激しく鳴る胸の音。
あ、
ときめきではなく、恐怖のあまり鳴る心臓の音です。
「・・・・え・・・・っと・・・・・。」
声が出ない。
ビビった私は全く声が出なかった。
私絶対・・・絞められる・・・・。
――湊said
小さいくせに・・・・生意気な女に出会った。
クルクルに髪を巻き・・・ポニーテールにしやがって・・・。
少し可愛い顔をして、大人しいのかと思っていたら
違った。
「おもてなししてやるよ」
壁に手を付きそう言うと、その小さな女は目をパチパチさせて・・・。
固まった。
ポーーーン・・・・。
エレベーターが1階に着き硬直した女の手を引きエレベーターを降りると・・・・。
「あのっ・・私もう帰ります!」
はぁ???
「俺のおもてなしがまだなんですけどーー・・・」
あそこまで言われちゃ・・・・。
このまま帰すわけにはいかない。
「もういい!私電車の時間があるし!!」
「送るから良い!」
駅からさらに離れて、ビルの向こう側にある駐車場兼駐輪場に向かった。
自分のバイクが止めてある方に歩いて行くと・・・女は俺の脇に来て・・・
「あの・・もういいから!!お願いだから帰らしてッ・・・」
・・・・・・・。
あーーー・・・。
またまた屈辱だ。
この女どんどん地雷踏んで来る。
俺はバイクの中からもう一つのメットを出し・・・女の頭に被らせると、
「俺と居たくない?」
そう言って頭をポンッと叩いた。
そう言えば、大体の女は少し悩んだりしても・・・一緒に居たいとか言ってくるッ・・・・・。
筈。
なのに、
「出来れば居たくないです!」
その、ポニーテール女は真顔でそう言った。
ガーーン・・・・。
そんなこと言われたのは初めてだし、笑わない女も初めてだ。
「あのさ、・・・、アンタさっきから結構ーーー・・俺の繊細な心ザクザク刺して来てるんだけど!」
俺はバイクに腰掛けて言った。
「だ・・・だって!!あんな上から目線の男の人って・・・初めて見たし!!すっごい感じ悪いし仲良くなれる気しないしッ!!」
またそれね!!
結構しつこいな。
「そっか・・、・・・・んじゃーーさ、ちょっと挽回させろよ!そんでも嫌いって思ったらもう俺も諦めるし!」
諦めるって・・・別にマジでどうしようとか思ってないけど、こんな人生初の断られて終わる。
というのは、
避けたい。
まぁ、結構可愛いし。
一緒に居ても苦じゃないし。
――瑠衣said
挽回・・・って・・・。
一体何なんだろう。
この人。
そう思ったのに、男のその真っすぐな目に・・・・
吸い込まれるようにして・・私はその男のバイクに跨ってしまった。
男は振り返ってきて笑い、
「家は近い???」
そう言った。
え・・・・。
近いですけど・・・・。
一回頷くと、男は自分もメットを被ってエンジンをかけた。
あっ!!!
普通にバイクに乗ったけどッ!!
私は男の肩を掴み・・・・。
「ちょっと!これって飲酒じゃない!ダメだって!」
そうだよッ!今は厳しいんだからッ・・・・。
すると男はまた私の方を見て・・・・。
「俺、酒一滴も飲んでませんけど?」
え・・・・・。
「酒よりバイク乗りたいからッ!--・・・って、お前、目の前座ってて気づかなかったのかよ?」
あーー・・・・。
怖くて見てませんでした。
「まぁいーや!・・・行くぞッ!!」
意外と真面目?
なんだコイツ・・・。
――湊said
あれっ?!
この女名前なんだっけ???
まーーーいーーーや!!
適当に連れまわしてホテル行けばいいや。
横浜駅を出発してみなとみらいの方面に向かった。
女なんて、夜景見せてちょっと雰囲気の良い場所に連れて良きゃその場でキス位は出来るし。
そんな安易な考えで、俺は山下公園付近にバイクを止めた。
よしよし・・・。
今日は平日だし人はそこまではいない!
港沿いを散歩してーー手でもつないでみて様子見るか。
俺がバイクを止め降りてから女の方を見ると・・・。
女はメットを外しながら辺りを見渡した。
どう?
お船が見えんだろー???
って言おうと思ったその時・・・・。
「随分ベターな場所連れて来てくれたんだね」
女はニコリともせずそう言った。
・・・・・・・。
なっ・・・・。
何なのこの女ッ・・・・・!!!!
マジムカつくんだけどッ!!
女がメットを外して置こうとしたから、
俺をそのままメットを女の頭に戻しベルトをギューーー―っと!!絞めた。
「あれっ??山下公園行かないの?」
行かないの?
行かねーーーよ!!!
「行くわけねーだろっ!早く乗れよッ・・・・」
何この負けた感じ。
負けてねーし。
マジ・・・・
ムカつく!
俺はまたエンジンをかけ・・・・。
走った。
「ねぇ―――!!何処行くのーーーー???」
女が後ろから聞いてくるけどムシムシ!!
俺は走って・・・
走って走って・・・・。
走りまくった!
――龍said
あーーーあ・・・。
湊ッ・・・瑠衣ちゃんをお持ち帰りしたのかな?
俺と太一と誠はギャル3人と別れて、湊もいつも止めてる駐輪場に向かった。
「なぁーーー、湊何処行ったんかな?」
太一がヘラヘラしながら言って来た。
・・・・・・。
「ホテルじゃん?」
しかし・・・。
バイク置き場につくと・・・もう既に湊のバイクはなく・・・。
あれ・・??その辺のホテル行ったんじゃねーのかな・・。
「湊バイク出したんだッ!瑠衣ちゃんも一緒かな?」
誠が言う。
一緒じゃなかったら連絡来るだろ?!
てか・・・。
いきなり啖呵を切って来たあの幼顔の瑠衣ちゃんを、湊が俺等には何も言わず速攻追いかけて行った。
顔はメチャ切れてたけど~・・・。
「珍しいよね、湊がバイク出して女の子連れてくのッ!」
太一が自分のバイクに跨って煙草に火をつけ言った。
確かに・・・・。
いつも女にせがまれても絶対に乗せないのに・・・。
「瑠衣ちゃんが可愛かったから?」
誠がゲタゲタ笑って言った。
確かに・・・。
「ありゃ可愛かったなッ!!」
俺も・・・・そう思った。
久々見る、可愛い顔をした女の子。
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