「それに、それにね、」



少し下を向きながら蝉川さんは口を開く。



「寿命が決まってるのも、いいなって思うの。

地上に出てから約1週間。個体差はあるけど、大体の寿命は決まっているでしょ?

人間みたいにすごい曖昧じゃなくていいなって、そう思う。」


『土の中の数年は?』


「土の中は寝ててわからないからいいの。」


『なんだそりゃ。』



少し呆れたような眼差しを向ける。



『めっちゃ早く死ぬんだぞ?

しかも飛びながらおしっことかするらしいぞ?』


「いいじゃない。

したいときにできて。

人間みたいにわざわざトイレ探さなくていいのよ?」



蝉川さんの感性はよくわからない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る