第4話 *

◇ ◇ ◇


「……ねえ、なんか言ってよ」


 まるで塞き止めていた栓を抜かれたように、目の前で同じ様にしゃがみ込むクラスメイトに一通りの説明を終えた私に、彼は特に何も言う様子がなかった。


 聞くって言うからこっちだって言ったのに、なんとも酷い反応ではないか。それともあまりに一方的に喋り続ける女の姿に、さすがに引いたのだろうか。それなら文句も言えないけど。


 きっとこういう所も含めて全てが「子供」なのだろう。大人の恋愛には程遠い、ただ面倒な女。あの時、怖いのを我慢して処女を捨てていたら、先輩にフラれることもなかったのかな……。


 考えたらまた、惨めで残酷で悲しくなる。


「相良でも、フラれたりするんだな」

「……は?」


 また溢れそうになった涙が止まったのは、ようやく口を開いたクラスメイトの言葉が、あまりに呑気なものだったからだ。


「いやだから、相良がフラれるのが意外だと思って」


 意外、意外って、この男はいったいどんなイメージを私に持っていたのだろう。お互いたいして知らないのに。


「意味わかんない!普通にフラれるよ!今までだって告白してもフラれてばっかで、やっと付き合えたんだよ??それなのに二か月で別れるって……もう最悪」


 怒っているのか、悲しんでいるのか、自分でもコントロールが出来ない。


「相良、可愛いからモテそうなのに」

「……そういうお世辞とかいらないから」

「別にお世辞じゃないけど?男子で相良のこと褒めてる奴、結構いるよ?」

「そんなの聞いたことなに」

「まあ、近寄りづらいからな」

「……え?なにそれ?」

「相良って可愛いけど派手だから。なんか遊んでそうだし、理想高そうだし、普通の男は相手にしてもらえないって思うんじゃねーの?」

「私、遊んでなんてない!」

「実際そうじゃなくても、こうやって話したりしない限りは見た目のイメージで判断するしかないのは仕方ないと思うけど?その先輩が相良をフッた理由は知らないけど、付き合った理由は簡単。相良が可愛いから。まあそれで、損もするだろうけど」


 どうでも良さそうな顔の有馬に、たぶん褒められた。でも、遠回しに貶されている気もして、どんな顔をすればいいかわからなかった。恥ずかしい気持ちと反論したい気持ちが、頭の中で喧嘩しているみたいに。


 ただ、有馬は大人だと思った。私の一方的な話に口を挟まなかったのは、冷静に聞いてくれていたからなのかもしれない。話くらいなら聞くと言った通り、お説教も同情もなく、ただ私の話を聞いてくれた。


「有馬って、やっぱすごいね」

「何が?」

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